イントロダクション
CapeOX(XELOX)療法は主に大腸がん、胃がんで用いられるレジメンです。
大腸がんは、男女合わせて罹患数の順位1位(2019年)・死亡数の順位2位(2022年)*1であり、
胃がんは、男女合わせて罹患数の順位3位(2019年)・死亡数の順位3位(2022年)*1です。
また、CapeOXは大腸がん・胃がん共に術後補助化学療法で用いられ、再発抑制のためには治療の完遂が肝要です。そこで、薬剤師による薬学管理が非常に重要になります。
下記のレジメン一覧&がん種逆引きツールもご活用ください。
レジメン
CapeOX(XELOX)療法
薬剤名 | 投与量 | 投与日 | 投与間隔 |
Cape | 2000mg/m2 分2 | Day 1~14 | 21日毎 |
L-OHP | 130mg/m2 | Day 1 | 21日毎 |
制吐療法
中等度催吐性リスク(MEC)
Day 1 | Day 2 | Day 3 | |
パロノセトロン | 0.75mg | ||
デキサメタゾン | 6.6~9.9mg静注 | (8mg経口) | (8mg経口) |
治療目的
副作用
CapeOX(XELOX)療法に特徴的な副作用プロファイル
併用時のGrade 3以上の副作用は、好中球減少(15%)*4、血小板減少(6%)*4、下痢(6%)、嘔気(3%)、嘔吐(1%)等です。
カペシタビンの特徴として、手足症候群(HFS、CapeOX:Grade 2以上は15%、Grade 3以上は3.1%)*4の頻度が高いです。
オキサリプラチンの特徴として、急性の末梢神経障害(ほぼ必発*5)、慢性の末梢神経障害(CapeOX:Grade 2以上は37%、Grade 3以上は6.3%)*4があります。
細胞障害性抗がん剤に共通する副作用
目安ですが一般的なものを時期とともに記載します。
投与日:急性嘔吐、アナフィラキシーショック
投与日~2日後:急性末梢神経障害(手足・口唇周囲の知覚異常、絞扼感など)→寒冷刺激で悪化
投与翌日~1週間:遅発性嘔吐
1週間~3週間:粘膜障害(下痢、口内炎)、便秘
2週間~3週間:手足症候群
数週間~数ヶ月:慢性末梢神経障害
1コース終了後くらい:脱毛
血液検査としては、2週間後に好中球がNadir(底)となります。血小板の寿命が7〜10日程度のため、1〜2週間後に低下する場合があります。
赤血球の寿命が120日と長いため、貧血は数コース施行してから起こることが多いです。
その他の副作用:細胞障害性抗がん剤は、正常細胞にもダメージを与えるため、様々な副作用が起こりえます。その中でも間質性肺炎は命に関わることもあり特に注意が必要です。
フォローアップ
薬学管理
時期に応じて副作用を聴取して、疑義照会・トレーシングレポートに繋げると良いでしょう(市販薬のみで自己判断せず医療機関と連携したほうが良いでしょう)。
投与日〜1週間:嘔気・嘔吐、食事量などを確認します。
必要に応じて制吐剤(予防投与と作用機序の異なるもの*6:例えばD遮断薬や、オランザピンなど)などを提案します。
1週間~3週間後:便秘を確認します。必要に応じて定期緩下剤+屯用刺激性下剤などを提案します。
2週間~3週間後:手足症候群の発現がないかを確認します。CTCAE Grade 2以上(例えば、痛みを伴う時)の場合、休薬が必要となるため*7、医療機関に休薬を提案します。対症療法として、予防には保湿剤、治療にはステロイド外用薬が用いられます。なお、尿素含有製剤は刺激感があるために、びらんがある部位には使用しない方が望ましいです*8。ステロイド外用薬は手足にはストロンゲストから使用し改善に応じてランクを下げる(顔には使用しない)とされています*8が、実際には手足にベリーストロング~ストロンゲストが使用されることが多いです。
長期:慢性の末梢神経障害を確認します。一般的に減量や休薬にて対応しますが、抗腫瘍効果が減弱する点には注意が必要です*5。ただし、大腸がんにおいてはstop & go strategy(強い末梢神経障害が現れた場合に休薬し、改善したら再開する方法)で効果を落とさずに神経障害を抑制できるとされています*5。または、末梢神経障害に対しては対症療法(エビデンスに乏しいがプレガバリンや、保険適応外だがデュロキセチンなど)も考慮します。
生活上のアドバイス
急性の末梢神経障害:急性の末梢神経障害がないかを確認します。寒冷刺激で悪化することを説明し、仕事・家事・日常生活でにおいて寒冷刺激を避ける(例えば、保冷庫での仕事・冷蔵庫や冷凍庫内の作業・冷たい飲み物の摂取)よう指導します。
手足症候群:刺激を避けることと、保湿が予防に重要だと伝えます。具体的には、洗い物の際は手袋をつける、厚めの靴下を履く、日光が当たらないようにする等です。保湿は十分な量(1FTUで掌2枚分)を少なくとも1日2回以上行い、手洗い後にも追加で保湿するよう指導します。
嘔気・嘔吐:不安自体が嘔吐の原因となる*6ため、過度な不安を煽らないように説明します(予防投与がされていることを十分に説明)。それでも発現した場合は、我慢せずに症状があることを伝えてもらうよう指導します(嘔吐の経験は、予期性嘔吐の原因となるた*6め)。また、食べやすいものを食べてもらう(匂いの強いものは食べづらい傾向がある)など、工夫するよう指導します。
脱毛:1コースが終了する前に、ウィッグなど脱毛に対する準備をしておくことを説明します。洗髪の際は、指の腹で洗うようにするなど、頭皮へ負担をかけないように指導します。
好中球減少:化学療法から2週間後は、一般に好中球数が最も低くなるので(Nadir)、手洗いうがいの励行・人混みを避ける・新鮮なものを食べるようにするなど、感染予防に努めるように指導します。
間質性肺炎:空咳、発熱、呼吸困難感があれば間質性肺炎の可能性があるため、受診するよう指導します。
スペシャル・ポピュレーション
腎機能障害
カペシタビン
Ccr(mL/min) | 51~80 | 30~50 | 30未満 |
カペシタビン | 減量不要 | 75%量 | 禁忌 |
オキサリプラチン
Ccr(mL/min) | 中等度低下 | 30未満 |
オキサリプラチン | 減量不要 | 禁忌* |
肝機能障害
カペシタビン
慎重投与。臨床試験での開始基準の目安として以下のものがあります。
総ビリルビン | 基準値上限1.5倍以下 |
AST/ALT | 基準値上限2.5倍以下(肝転移がある場合5倍) |
ALP | 基準値上限2.5倍以下(肝転移がある場合5倍) |
参考文献
*1:最新がん統計:[国立がん研究センター がん統計] (ganjoho.jp)
*2:大腸癌治療ガイドライン
*3:胃癌治療ガイドライン
*7:ゼローダ®適正使用ガイド
免責事項
本記事は一般的な情報提供を目的としており、個々の患者の治療を指示するものではありません。具体的な治療に関しては、担当の医師・薬剤師が最終的な判断を行ってください。
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