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薬ケモ(薬剤師向け化学療法解説)FOLFIRI+Bev(5-FU+レボホリナート+イリノテカン+ベバシズマブ)療法

レジメン

イントロダクション

FOLFIRI+Bev療法は主に大腸がんで用いられるレジメンです。

大腸がんは、男女合わせて罹患数の順位1位(2019年)・死亡数の順位2位(2022年)*1です。

また、FOLFIRIは、Bev以外の分子標的治療薬と併用するレジメンも存在するため、これを理解すると他のレジメンにも応用が利きます。

下記のレジメン一覧&がん種逆引きツールもご活用ください。

化学療法レジメン一覧&がん種逆引き
化学療法に関するレジメン一覧&がん種逆引きのためのツールです。化学療法情報から、がん種を探す際にご活用ください。

レジメン

FOLFIRI+Bev療法

Day 1Day 14
5-FU bolus400mg/m2
5-FU infusion2400mg/m2 (46hr)
l-LV200mg/m2
IRI150mg/m2
Bev5mg/kg
14日毎。レジメンの一例。

制吐療法

中等度催吐性リスク(MEC)

Day 1Day 2Day 3
パロノセトロン0.75mg
デキサメタゾン6.6~9.9mg静注(8mg経口)(8mg経口)
MECにおける制吐療法の一例。Day 2~3のデキサメタゾンは省略可能。参考文献:制吐薬適正使用ガイドライン

治療目的

  1. 進行性大腸がん*2
ベバシズマブの作用機序:ベバシズマブは血管内皮細胞増殖因子(VEGF)と特異的に結合し、VEGFRとの結合を阻害することで、腫瘍組織での血管新生を抑制します。
5-FUの作用機序:5-FUは体内でリン酸化され、F-dUMPは5,10-CH2-THFおよびチミジル酸シンターゼと複合体を形成することでDNA合成を阻害し、F-UTPはRNAに取り込まれてそのRNA機能を障害します。また、l-LVは体内で代謝されて5,10-CH2-THFとなり、DNA合成阻害を増強します。
イリノテカンの作用機序:イリノテカンは細胞周期のS期において、DNAトポイソメラーゼ1を阻害し、抗腫瘍効果を示します。

副作用

FOLFIRI+Bev療法に特徴的な副作用プロファイル

ベバシズマブの特徴として、創傷治癒遅延*3高血圧(併用時:Grade 1は25%、Grade 2は15%、Grade 3は3%)、蛋白尿(併用時:Grade 1は24%、Grade 2は15%)、易出血(消化管出血[併用時:Grade 1は12%、Grade 2は1%]、鼻出血[併用時:Grade 1は27%、Grade 2は1%])、血栓症(静脈血栓症:併用時:Grade 2は3%、Grade 3は6%)、消化管穿孔(Grade 3は3%、Grade 5は1%)等*4があります。

5-FUの特徴として、手足症候群(HFS、mFOLFOX6:Grade 2は4%、Grade 3は1%)*4があります。

イリノテカンの特徴として、下痢(併用時:Grade 1は32%、Grade 2は13%、Grade 3は9%)*4があります。

併用時の副作用は、好中球減少(Grade 3:30%、Grade 4:15%)*4悪心(Grade 3:7%)*4嘔吐(Grade 3:5%)*4等です。

mFOLFOX6+Bevと比較すると、骨髄抑制は強い(好中球減少および白血球減少の頻度が高い)*4です。また、当然ですがオキサリプラチンが無いので末梢神経障害の頻度は低い*4です。

細胞障害性抗がん剤に共通する副作用

目安ですが一般的なものを時期とともに記載します。

投与日:急性嘔吐、アナフィラキシーショック

投与翌日~1週間:遅発性嘔吐

1週間~3週間:粘膜障害(下痢、口内炎)、便秘

2週間~3週間手足症候群

1コース終了後くらい:脱毛

血液検査としては、2週間後に好中球がNadir(底)となります。血小板の寿命が7〜10日程度のため、1〜2週間後に低下する場合があります。

赤血球の寿命が120日と長いため、貧血は数コース施行してから起こることが多いです。

その他の副作用:細胞障害性抗がん剤は、正常細胞にもダメージを与えるため、様々な副作用が起こりえます。その中でも間質性肺炎は命に関わることもあり特に注意が必要です。

フォローアップ

薬学管理

時期に応じて副作用を聴取して、疑義照会・トレーシングレポートに繋げると良いでしょう(市販薬のみで自己判断せず医療機関と連携したほうが良いでしょう)。

時期に関係なく
血圧を確認します。Grade 2(例:140/90以上)の場合、降圧薬による治療を、Grade 3(例:160/100以上)の場合、血圧コントロールが可能になるまで休薬を提案します*5。治療薬はACE阻害薬やARBが推奨され、一方で利尿薬は推奨されない・・ようです*5。臨床試験ではCa拮抗薬も用いられていたとのことです。
創傷治癒遅延:手術がある場合、要注意です。
手術後に投与する場合:創部が治癒してから投与することが原則*5です。大手術後28日間経過していない患者への投与経験はないようです*5
投与後に手術する場合:十分な期間を開けることとされていますが、適切な期間は明らかになっていないので半減期を考慮して決定するとされています*5。半減期は12日前後ですので、その4~5倍である48日~60日(6~8週)程度と考えられます。実際に医療機関の休薬期間をインターネット上で調査すると6~8週とされることが多いようです。

投与日〜1週間
●嘔気・嘔吐、食事量などを確認します。
必要に応じて制吐剤(予防投与と作用機序の異なるもの*6:例えばD遮断薬や、オランザピンなど)などを提案します。
●イリノテカンによる遅発性下痢がないかを確認します。活性代謝物であるSN-38による腸粘膜障害が原因とされています。抗コリン薬やロペラミド等で対応しますが、重症の場合は補液投与が必要な場合もあり受診勧奨も考慮します。SN-38はグルクロン酸抱合を受けSN-38Gとして胆汁排泄されますが、SN-38Gは腸内細菌のβ-グルクロニダーゼによりSN-38へと脱抱合され再吸収されます(腸肝循環)。そこで、β-グルクロニダーゼ阻害作用のある半夏瀉心湯が下痢に対して用いられることがあります*7

腸肝循環:イリノテカンの活性代謝物SN-38は、肝臓でグルクロン酸抱合を受けSN-38Gとなり胆汁排泄されます。腸管内のSN-38Gは腸内細菌のβ-グルクロニダーゼによりSN-38へ脱抱合され、再吸収され肝臓へ入ります。そこで、β-グルクロニダーゼ阻害作用のある半夏瀉心湯が下痢に用いられることがあります。

1週間~3週間後:便秘を確認します。必要に応じて定期緩下剤+屯用刺激性下剤などを提案します。イリノテカンは下痢が有名ですが、便秘は胆汁排泄された代謝物SN-38Gの腸管排泄遅延を招くため、排便コントロールも非常に重要です。

2週間~3週間後手足症候群の発現がないかを確認します。最も確実な対処は休薬*8ですが、5-FUの明確な休薬の基準はありません。局所療法として、予防的なヘパリン類似物質の外用薬*8があり、症状の程度によってステロイド外用薬が用いられることが一般的です。5-FUはカペシタビンより軽症な傾向があります*8

生活上のアドバイス

下痢イリノテカンによる下痢は重症化する場合もあり、止瀉薬の適切な使用を指導します。脱水にならないように水分摂取を促し、腸へ負担のかかる飲食物(刺激物など)は避けるように指導します。下痢の頻度が多すぎたり、水分摂取が困難な場合には、相談するよう指導します。

手足症候群刺激を避けることと、保湿が予防に重要だと伝えます。具体的には、洗い物の際は手袋をつける、厚めの靴下を履く、日光が当たらないようにする等です。保湿は十分な量(1FTUで掌2枚分)を少なくとも1日2回以上行い、手洗い後にも追加で保湿するよう指導します。

嘔気・嘔吐:不安自体が嘔吐の原因となる*6ため、過度な不安を煽らないように説明します(予防投与がされていることを十分に説明)。それでも発現した場合は、我慢せずに症状があることを伝えてもらうよう指導します(嘔吐の経験は、予期性嘔吐の原因となるた*6め)。また、食べやすいものを食べてもらう(匂いの強いものは食べづらい傾向がある)など、工夫するよう指導します。

脱毛:1コースが終了する前に、ウィッグなど脱毛に対する準備をしておくことを説明します。洗髪の際は、指の腹で洗うようにするなど、頭皮へ負担をかけないように指導します。

好中球減少:化学療法から2週間後は、一般に好中球数が最も低くなるので(Nadir)、手洗いうがいの励行・人混みを避ける・新鮮なものを食べるようにするなど、感染予防に努めるように指導します。

間質性肺炎:空咳、発熱、呼吸困難感があれば間質性肺炎の可能性があるため、受診するよう指導します。

易出血:あらゆる箇所で出血が現れる可能性があり(消化管出血、肺出血、脳出血等)、重篤な場合はすぐに受診するよう指導します。また、粘膜からの出血(鼻、歯茎、膣など)もあるため、生活上で出血を助長しないように注意(優しく鼻をかむ、歯磨きで力を入れすぎない、等)を説明します。

血栓塞栓症:脳、心臓、肺等で血栓が起こることがあります。急激な・・・頭痛・胸痛や、ろれつが回らない・麻痺等の症状があればすぐ受診するよう指導します。

スペシャル・ポピュレーション

腎機能障害

5-FU

一般的には、肝代謝のため投与量調整は不要とされています。

しかしながら、5-FUの代謝物であるFBALが腎排泄であるため、重篤な腎障害や透析患者では高アンモニア血症が生じた報告が複数あり*9,10、減量や透析のタイミングなど特別な配慮が必要です。

肝機能障害

イリノテカン

肝障害が悪化及び副作用が強く発現する可能性があります。イリノテカンは主に肝臓で活性代謝物SN-38に変換されたり、一部はCYP3A4で無毒化されます。SN-38は主に肝臓でグルクロン酸抱合され胆汁中に排泄されます。

参考文献

*1:最新がん統計:[国立がん研究センター がん統計] (ganjoho.jp)

*2:大腸癌治療ガイドライン

*3:アバスチン®添付文書

*4:Randomized phase III study of bevacizumab plus FOLFIRI and bevacizumab plus mFOLFOX6 as first-line treatment for patients with metastatic colorectal cancer (WJOG4407G) – PubMed (nih.gov)

*5:アバスチン®適正使用ガイド:結腸・直腸癌

*6:制吐薬適正使用ガイドライン

*7:Preventive effect of Kampo medicine (Hangeshashin-to) against irinotecan-induced diarrhea in advanced non-small-cell lung cancer – PubMed (nih.gov)

*8:厚生労働省:重篤副作用疾患別対応マニュアル (mhlw.go.jp):手足症候群

*9:Accumulation of alpha-fluoro-beta-alanine and fluoro mono acetate in a patient with 5-fluorouracil-associated hyperammonemia – PubMed (nih.gov)

*10:Successful management of hyperammonemia with hemodialysis on day 2 during 5-fluorouracil treatment in a patient with gastric cancer: a case report with 5-fluorouracil metabolite analyses – PubMed (nih.gov)

免責事項

本記事は一般的な情報提供を目的としており、個々の患者の治療を指示するものではありません。具体的な治療に関しては、担当の医師・薬剤師が最終的な判断を行ってください。

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