当サイトには広告が含まれております

薬ケモ(薬剤師向け化学療法解説)GC(ゲムシタビン+シスプラチン)療法

レジメン

イントロダクション

GC療法は、膀胱がん、非小細胞肺がん、胆道がん等で使用されるレジメンです。分子標的治療薬や免疫チェックポイント阻害薬との併用レジメンも存在するため、本レジメンの特徴を理解することは重要です。

下記のレジメン一覧&がん種逆引きツールもご活用ください。

化学療法レジメン一覧&がん種逆引き
化学療法に関するレジメン一覧&がん種逆引きのためのツールです。化学療法情報から、がん種を探す際にご活用ください。

レジメン

GC療法

膀胱がん

Day 1Day 2Day 8Day 15Day 28
GEM1000mg/m2
CDDP70mg/m2
28日毎/レジメンの一例

非小細胞肺がん

Day 1Day 8Day 21
GEM1000mg/m2
CDDP80mg/m2
21日毎/レジメンの一例

胆道がん

Day 1Day 8Day 21
GEM1000mg/m2
CDDP25mg/m2
21日毎/レジメンの一例

制吐療法

高度催吐性リスク(HEC)、胆道がんは中等度催吐性リスク(MEC)とされていますが高度催吐性リスクとしている施設もあります。

Day 1Day 2Day 3Day 4
アプレピタント125mg80mg80mg
パロノセトロン0.75mg
デキサメタゾン9.9mg静注8mg経口8mg経口8mg経口
HECにおける制吐療法の一例。参考文献:制吐薬適正使用ガイドライン

治療目的

  1. 膀胱がん術前化学療法*1
  2. 進行性膀胱がん*1
  3. 進行性非小細胞肺がん*2
  4. 進行性胆道がん*3
ゲムシタビンの作用機序:ゲムシタビンはdFdCTPに代謝された後、dCTPと競合的にDNA鎖に取り込まれ、アポトーシスを誘導します。また、dFdCDPに代謝された後、リボヌクレオチドレダクターゼを阻害します。
シスプラチンの作用機序:シスプラチンはDNA架橋し、細胞周期に関わらず抗腫瘍効果を示します。

副作用

GC療法に特徴的な副作用プロファイル

ゲムシタビンの特徴として、血管痛(注射部位反応:1〜10%未満)*4

発熱*4(10%以上、もしくは20%)、発疹*4(10%以上)があります。

シスプラチンの特徴として、末梢神経障害(1〜10%未満)*5

嘔気・嘔吐(GC:Grade 2以上でそれぞれ58%・48%)*6腎障害(ショートハイドレーション法では1L程度の経口補液が必要*7)があります。

骨髄抑制(GC:Grade 3以上の好中球減少:63%)*6の頻度はTC療法など他のプラチナ+第3世代抗がん剤併用療法と比べると少なくなります。

シスプラチンによる嘔気・嘔吐はしつこく、筆者は数週間続くケースも経験しており、脱水になると腎障害のリスクも高まります。【嘔気・嘔吐→脱水→腎障害→排泄遅延→副作用増強(嘔吐)】という悪循環のおそれがあり、特に注意が必要です。

細胞障害性抗がん剤に共通する副作用

目安ですが一般的なものを時期とともに記載します。

投与日:静脈炎、急性嘔吐、アナフィラキシーショック

投与翌日~1週間:遅発性嘔吐

1週間~3週間:粘膜障害(下痢、口内炎)、便秘

数週間~数ヶ月:神経障害

1コース終了後くらい:脱毛

血液検査としては、2週間後に好中球がNadir(底)となります。血小板の寿命が7〜10日程度のため、1〜2週間後に低下する場合があります。

赤血球の寿命が120日と長いため、貧血は数コース施行してから起こることが多いです。

その他の副作用:細胞障害性抗がん剤は、正常細胞にもダメージを与えるため、様々な副作用が起こりえます。その中でも間質性肺炎は命に関わることもあり特に注意が必要です。

フォローアップ

薬学管理

時期に応じて副作用を聴取して、疑義照会・トレーシングレポートに繋げると良いでしょう(市販薬のみで自己判断せず医療機関と連携したほうが良いでしょう)。

投与日:ゲムシタビンによる血管痛がないかを確認します。温罨法等で対応することがあります。溶解に5%ブドウ糖液を用いることで血管痛が緩和されたとの報告*8がありますが、承認された方法は生理食塩液での溶解のため注意が必要です。

投与日〜1週間
●嘔気・嘔吐、食事量などを確認します。
必要に応じて制吐剤(予防投与と作用機序の異なるもの*9:例えばD遮断薬や、オランザピンなど)などを提案します。
脱水の可能性があれば腎障害を防ぐために補液点滴の追加*7を医療機関と相談の上で考慮します。

●発熱の有無を確認します。投与3〜4日目に発現しやすいとの報告*10があります。一般的には解熱剤で対応しますが、発熱性好中球減少症(受診勧奨)や腫瘍熱(ナイキサン®等を考慮)の可能性もあり注意を要します。

●発疹の有無を確認します。一般的には、症状に合わせて外用ステロイドや抗ヒスタミン薬などで対応します。

1週間~3週間後:便秘を確認します。必要に応じて定期緩下剤+屯用刺激性下剤などを提案します。

長期:末梢神経障害を確認します。一般的に減量や休薬にて対応しますが、抗腫瘍効果が減弱する点には注意が必要です*11。または、末梢神経障害に対しては対症療法(エビデンスに乏しいがプレガバリンや、保険適応外だがデュロキセチンなど)も考慮します。

生活上のアドバイス

血管痛:ゲムシタビン投与中は血管痛が起こることがあり、ホットパックで血管を温める等で対応できる場合があるため、近くの医療スタッフへ伝えるよう説明します。

発熱:点滴3~4日後にゲムシタビンの副作用で起こりうること、程度によって医師の判断で解熱剤で対応できることを伝えます。一方、38℃以上の場合は発熱性好中球減少症の可能性があるため、すぐに受診するよう伝えます。

発疹:ゲムシタビンの副作用で発疹が起こりうることを伝えます。症状がひどい場合は医師の判断でステロイド外用薬等で対応できることを伝えます。

嘔気・嘔吐:不安自体が嘔吐の原因となる*9ため、過度な不安を煽らないように説明します(予防投与がされていることを十分に説明)。それでも発現した場合は、我慢せずに症状があることを伝えてもらうよう指導します(嘔吐の経験は、予期性嘔吐の原因となる*9ため)。また、食べやすいものを食べてもらう(匂いの強いものは食べづらい傾向がある)など、工夫するよう指導します。

腎障害:シスプラチンによる腎障害を防ぐため、脱水にならないよう十分な水分摂取を指導します。水分が取れないほど嘔気・嘔吐が強い場合は、補液点滴が必要な場合があり相談するよう指導します。

脱毛:1コースが終了する前に、ウィッグなど脱毛に対する準備をしておくことを説明します。洗髪の際は、指の腹で洗うようにするなど、頭皮へ負担をかけないように指導します。

好中球減少:化学療法から2週間後は、一般に好中球数が最も低くなるので(Nadir)、手洗いうがいの励行・人混みを避ける・新鮮なものを食べるようにするなど、感染予防に努めるように指導します。

間質性肺炎:空咳、発熱、呼吸困難感があれば間質性肺炎の可能性があるため、受診するよう指導します。

スペシャル・ポピュレーション

腎機能障害

シスプラチンは腎機能に応じて投与量を調整することがあります。

Ccr(mL/min)60〜4645〜3030未満
CDDP75%50%投与を推奨しない
シスプラチン投与量調整の一例。参考文献:がん薬物療法時の腎障害診療ガイドライン 2022

肝機能障害

ゲムシタビンは肝機能の悪化を引き起こす可能性があり注意が必要です*12

参考文献

*1:膀胱癌診療ガイドライン 2019年版

*2:肺癌診療ガイドライン2023年版

*3:Clinical practice guidelines for the management of biliary tract cancers 2019: The 3rd English edition – PubMed (nih.gov)

*4:ジェムザール®︎添付文書

*5:ランダ®︎添付文書

*6:Randomized phase III study of cisplatin plus irinotecan versus carboplatin plus paclitaxel, cisplatin plus gemcitabine, and cisplatin plus vinorelbine for advanced non-small-cell lung cancer: Four-Arm Cooperative Study in Japan – PubMed (nih.gov)

*7:シスプラチン投与におけるショートハイドレーション法の手引き

*8:Use of glucose solution for the alleviation of gemcitabine-induced vascular pain: a double-blind randomized crossover study – PubMed (nih.gov)

*9:制吐薬適正使用ガイドライン

*10:Drug fever after cancer chemotherapy is most commonly observed on posttreatment days 3 and 4 – PubMed (nih.gov)

*11:がん薬物療法に伴う末梢神経障害マネジメントの手引き

*12:ジェムザール®添付文書

免責事項

本記事は一般的な情報提供を目的としており、個々の患者の治療を指示するものではありません。具体的な治療に関しては、担当の医師・薬剤師が最終的な判断を行ってください。

コメント

タイトルとURLをコピーしました