今回は活性型ビタミンD3製剤の中で本邦で承認されているアルファカルシドール、カルシトリオール、エルデカルシトールの違いや使い分けについてお話しします。
まずはビタミンD3(ビタミンDには側鎖の異なるビタミンD2とビタミンD3があります)についてお話しします。
このように活性型ビタミンD3となってから作用を示します。慢性腎不全では腎での水酸化能が低下するため血中の活性型ビタミンD3濃度が低下し骨粗鬆症の原因となります。
活性型ビタミンD3の作用は下記のものが知られています。
- 腎臓でのカルシウム(以下Caと記載)吸収を促進
- 小腸でのCa吸収を促進
- 骨吸収により血中Caを上昇させる副腎皮質ホルモン(パラトルモン)の産生を抑制
- 骨に働きかけて骨代謝を改善
以上により活性型ビタミンD3は骨密度および骨強度を改善します。
ビタミンD3の理解が済んだところで、本題の医薬品について考えていきましょう。
まずはそれぞれの構造式を見てください。
このように、アルファロール(アルファカルシドール)は腎での水酸化を受けた構造、ロカルトロール(カルシトリオール)は腎および肝で水酸化を受けた構造(=活性型ビタミンD3)、エディロール(エルデカルシトール)は活性型ビタミンD3の2β位にヒドロキシプロピルオキシ基が導入された構造です。
アルファロールおよびロカルトロールは、既に腎での活性化を受けているため、慢性腎不全の患者さんでも効果が期待できます。
ではこの2つの違いはなんでしょうか?用法(骨粗鬆症の場合)・半減期について考えてみます。
- アルファロール:用法0.5~1μgを1日1回。半減期17.6時間(n数不明)。
- ロカルトロール:用法1回0.25μgを1日2回。半減期16.2時間(n=2)。
それぞれの添付文書を参考。
アルファロールのほうが半減期が長いため1日1回の投与で済みます。この理由はおそらく、アルファロールは肝での活性化を必要としているため体内からの消失も遅くなるのだろうと考えられます(※ただしロカルトロールの半減期は成人2例からのデータなので信頼度は低いです。)。
アルファロール・ロカルトロールとエディロールの違いは何でしょうか?エディロールはロカルトロールの2β位に化学修飾がなされています。それによって、活性型ビタミンD3の作用に加えて強力な骨吸収抑制作用および骨密度増加作用、さらに、アルファロールと比較して椎骨骨折および非椎体骨折の発生頻度を低下させることが臨床試験で証明されています。ただし適応は骨粗鬆症のみです。
骨粗鬆症の効能の承認を取得した時期も確認してみましょう。
本邦ではアルファロールはロカルトロールよりも早く承認されたため日本人での使用経験が豊富であり、よく使用されます。また、用法が1日1回という簡便さも理由かもしれません。
まとめ。
薬品名 | 適応症 | 用法用量(骨粗鬆症) | 備考 |
---|---|---|---|
アルファロール | 骨粗鬆症 | 0.5~1μgを1日1回 | 日本人の使用経験豊富 |
ビタミンD代謝異常に伴う諸症状の改善※1 | |||
ロカルトロール | 骨粗鬆症 | 1回0.25μgを1日2回 | |
ビタミンD代謝異常に伴う諸症状の改善※1 | |||
エディロール | 骨粗鬆症のみ | 0.75μgを1日1回 | 骨吸収抑制・骨折抑制作用 |
※1 慢性腎不全、副甲状腺機能低下症、クル病・骨軟化症におけるビタミンD代謝異常伴う諸症状(低カルシウム血症、しびれ、テタニー、知覚異常、筋力低下、骨痛、骨病変等)の改善
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