
相互作用の実践的な理解に役立つ!筆者もこの書籍を読んで、特にCYP3A4阻害薬を扱う場面で即実践できる知識が得られました。
作表の根拠について
AUCを5倍以上に上昇させると考えられる阻害薬を「強い阻害薬」,同2倍以上5倍未満に上昇させると考えられる阻害薬を「中程度の阻害薬」,及び同1.25倍以上2倍未満に上昇させると考えられる阻害薬を「弱い阻害薬」とする
「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」の公表についてより引用改変
参考文献1)より、強い阻害薬、中等度の阻害薬、弱い阻害薬に分類しています。
参考分類2)および3)より、CYP3A4の阻害の強さをソートしています。
ぜひ、参考文献を確認ください。PISCSでお調べください。考案された先生の書籍は非常に勉強になります。
グレープフルーツについて
グレープフルーツジュースは、腸内CYP3A4の選択的阻害薬です。
そのため、グレープフルーツジュースによる阻害の程度は、基質薬の小腸アベイラビリティ(Fg)の影響を受けます。
Fgは、腸管での代謝を免れた割合とも言い換えられます。
つまり、Fgが低い基質薬ほど、グレープフルーツジュースによる腸内CYP3A4の阻害作用を受けることになります。
例を示します。
タクロリムス(Fg=0.14)
本剤とグレープフルーツジュースとの併用により、タクロリムスの血中トラフ濃度が約 300%上昇
プログラフのインタビューフォームより引用
アルプラゾラム(Fg=0.94)
AUC比は1.12倍に上昇
AAPS J. 2014 Nov;16(6):1309-20.より翻訳して引用
なお、実際のグレープフルーツジュースのCYP3A4の阻害の強さは参考文献3)を参照ください。
グレープフルーツジュースのCYP3A4阻害の強さの結論
グレープフルーツジュース製品の濃度・用量および基質薬の小腸アベイラビリティに左右される。
濃縮されていない通常のグレープフルーツジュース
CYP3A4の弱い阻害薬(基質薬のFgが大きい時)~中等度の阻害薬(基質薬のFgが小さい時)に分類することを提案します。
濃縮されたグレープフルーツジュース(Double-strength grapefruit juice)
CYP3A4の強い阻害薬に相当するので注意が必要ですが、基質薬のFgの影響も受けると考えられます。
考察
- CYP3A4で代謝される割合が100%の場合
- 強い阻害薬を併用すると、AUCは5倍以上になる
- 中等度の阻害薬を併用すると、AUCは2倍以上5倍未満になる
- CYP3A4で代謝される割合が50%の場合
- 強い阻害薬を併用すると、AUCは1.66…倍から2倍になる
減量や代替薬への変更等の注意が必要なのは
- 強い阻害薬 × 主にCYP3A4で代謝される薬物 → AUC5倍以上に上昇の可能性
- 中等度の阻害薬 × 主にCYP3A4で代謝される薬物 → AUC2~5倍に上昇の可能性
- 強い阻害薬 × 半分程度CYP3A4で代謝される薬物 → AUC1.67~2倍に上昇の可能性
私の考えですが、これらは影響が大きいので、対応を考えるべきだと考えます。ただし、上記に当てはまらなくても添付文書で併用禁忌や投与量減量等が規定されていることがありご注意ください。
阻害薬一覧(降順)
強い:リトナビル(パキロビッド/カレトラ/ノービア)、ボリコナゾール(ブイフェンド)、イトラコナゾール(イトリゾール)、クラリスロマイシン、ポサコナゾール(ノクサフィル)
中等度:エリスロマイシン(エリスロシン)、ジルチアゼム(ヘルベッサー)、シクロスポリン(ネオーラル/サンディミュン)、フルコナゾール(ジフルカン/プロジフ活性体)、ベラパミル(ワソラン)
弱い:シメチジン(タガメット)、チカグレロル(ブリリンタ)、ロキシスロマイシン(ルリッド)、フルボキサミン(デプロメール/ルボックス)
極めて弱い:アジスロマイシン(ジスロマック)
参考文献
1)「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」の公表について(◆平成26年07月08日事務連絡) (mhlw.go.jp)
2)Ohno Y, Hisaka A, Suzuki H. General framework for the quantitative prediction of CYP3A4-mediated oral drug interactions based on the AUC increase by coadministration of standard drugs. Clin Pharmacokinet. 2007;46(8):681-96. doi: 10.2165/00003088-200746080-00005. PMID: 17655375.
3)Loue C, Tod M. Reliability and extension of quantitative prediction of CYP3A4-mediated drug interactions based on clinical data. AAPS J. 2014 Nov;16(6):1309-20. doi: 10.1208/s12248-014-9663-y. Epub 2014 Oct 2. PMID: 25274605; PMCID: PMC4389753.
免責事項
*患者個別で対応は異なります。医師や薬剤師などの専門家の判断が必要です。
*注意して作成しておりますが、誤りがある可能性はございます。また、情報がアップデートされる可能性があり、常に最新の情報をご自身で確認するようにしてください。
*基質薬によって、添付文書上のCYP3A4阻害薬の強さの程度が、本表とは異なる場合があります。
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