PT-INRは主にワーファリンの抗凝固能の指標として用いられます。過延長すると出血のリスクが上昇します。また、Child-Pugh 分類にも使用されます。
ワーファリン服用中のPT-INRの目標値
目標値は患者毎に医師の判断に基づき決定されますので、患者さんに聞き取り確認してください。参考に下記に目標値の例を示しますが、実際には、病態や患者背景が考慮されて個別に決定されます。
“Warfarin適正使用情報第3版”より引用改変、“非弁膜症性心房細動における抗凝固療法のガイドライン改定”より引用改変
- 2.0~3.0(欧米人/血栓塞栓症ハイリスク患者で70歳未満など)
- 1.5~2.5 あるいは 1.6~2.6(日本人は欧米人より低め)
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相互作用
ワーファリンは相互作用が非常に多いです。
その際、ワーファリンにどのような効果を及ぼすか考えることが重要と考えます。
私の考え方の一部をご紹介します。
- 代謝の阻害 → 効果増強
- 代謝の誘導 → 効果減弱
- ビタミンKの低下 → 効果増強
- ビタミンKの増加 → 効果減弱
ただし、他の要因で抗凝固能が変化することもありご注意ください。
また、全ての相互作用を網羅しておりません。
処方変更がなされた際にはワーファリンの添付文書の確認や、文献報告の確認などが重要と考えます。
ワーファリンの効果が増強する一例:PTINRが延長する
- ケアラム/コルベット(イグラチモド):併用禁忌
- フロリード/オラビ(ミコナゾール):併用禁忌
- 抗生物質の使用:ビタミンK産生菌が減少するため
- CYP2C9阻害薬の使用
- 絶食・下痢などによるビタミンK吸収量の低下
ワーファリンの効果が減弱する一例:PTINRが短縮する
- グラケー(メナテトレノン):併用禁忌
- リファンピシン:代謝酵素を誘導するため
- ビタミンK含有食品:納豆、クロレラ、青汁など
参考文献:ワーファリン添付文書
相互作用が予想される場合の投与量調整は?
外来で1日量1mgから導入し週1回血液凝固能検査を行い、過量投与による出血性合併症に注意しつつ0.5~1mgずつ増減し、治療域に到達させる
Warfarin適正使用情報第3版”より引用
上記の記載があるため、相互作用が予想された場合は、
PT-INRの測定依頼しながら、0.5~1mgずつ増減するのが良いのではと考えます(患者個別で対応は異なりますので必ず患者さんと医師と薬剤師で協議して決定してください)
後述しますが、相互作用が起こるメカニズムや患者背景を十分考慮する必要はあるでしょう
薬局での対応例(あくまで仮の症例です)
- ワーファリン服用中の患者さんにゼローダが処方された
- 患者さんにゼローダによるワーファリンの効果が増強する可能性の情報伝達と出血兆候が現れれば受診するよう指導
- 医師にゼローダとの相互作用でワーファリンの効果が増強する可能性と、PTINRの測定依頼
- PT-INRの測定しながら、ワーファリンの用量調整がなされる
考察
ワーファリンの効果は、経口投与後12~24時間で発現し、48~72時間まで持続する(Warfarin適正使用情報第3版より引用)そうです。
そのため、代謝過程での相互作用が生じた場合の、PT-INRの測定タイミングは2~3日後にまずはフォローすると良いかもしれません(エビデンスは見つけられませんでした。)。
ビタミンK増減の影響に関しては、例えば抗生物質よるビタミンK産生菌の減少が原因であれば、ワーファリンの効果に影響を及ぼす時期は、時間がかかり、かつ、長期間に及ぶ可能性があるため、上記には当てはまらない可能性があります。
このように、相互作用が起こるメカニズムを推測することが、対応を考える上で重要と考えます。
免責事項
すべての薬を網羅しているわけではありません。
患者個別で対応は異なります。必ず医師や薬剤師など専門家の判断が必要です。
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