当サイトには広告が含まれております

酸塩基平衡異常と薬学

酸塩基平衡異常の原因と薬 検査値

アシドーシス

代表的な原因

呼吸性アシドーシス

低換気 → 血中にCO2蓄積し、PaCO2↑(炭酸は酸性)

代謝性アシドーシス

症状:クスマウル呼吸(規則的に続く早く深い呼吸:呼吸で代償するため)、吐き気、倦怠感など

2つのタイプに分類されます

アニオンギャップ正常性の代謝性アシドーシス(高クロール性アシドーシスともよばれる)…HCO3(アルカリ)が喪失し、Clが増加するタイプ

  • 下痢(HCO3の喪失)
  • 尿細管性アシドーシス
  • アセタゾラミド(近位尿細管におけるNa+、HCO3の再吸収の抑制)
  • 鉱質コルチコイド(≒アルドステロン)作用の低下(腎の集合管でH+-ATPaseによるH+の排泄が阻害)

アニオンギャップが増加する代謝性アシドーシス…Cl以外の陰イオン(有機酸など)が増加し、HCO3(アルカリ)が低下するタイプ

  • ケトアシドーシス(ケトン体は酸性)
  • 乳酸アシドーシス(乳酸は酸性)
  • 腎不全(有機酸の蓄積のため)
  • アスピリン中毒(サリチル酸は酸性)

注意を要する代表的な薬剤

  • メトグルコ(メトホルミン)
    • 警告:重篤な乳酸アシドーシス(添付文書)
  • 高カロリー輸液
    • 警告:ビタミンB1を併用せずに高カロリー輸液療法を施行すると重篤なアシドーシスが発現することがある(ハイカリック添付文書)
  • ダイアモックス(アセタゾラミド)
    • 禁忌:高クロール性アシドーシス(添付文書) → アニオンギャップ正常性の代謝性アシドーシスのことです
  • β遮断薬
    • 禁忌:糖尿病性ケトアシドーシス、代謝性アシドーシスのある患者(添付文書)
  • ウテメリン(リトドリン)
    • 禁忌:重篤な糖尿病の患者[過度の血糖上昇が起こるおそれがある。また、糖尿病性ケトアシドーシスがあらわれることもある](添付文書)
  • エビリファイ(アリピプラゾール)、クロザリル(クロザピン)、ジプレキサ(オランザピン)、セロクエル(クエチアピン) …ドパミン遮断薬
    • 警告:糖尿病性ケトアシドーシス(添付文書)
  • 生理食塩液(大量・急速投与)
    • 副作用:アシドーシスを起こすことがある(添付文書) → クロール負荷のためアニオンギャップ正常性の代謝性アシドーシスとなります
  • アルダクトン(スピロノラクトン)
    • 重大な副作用:代謝性アシドーシス(添付文書) …アルドステロン拮抗による
  • 肝不全用アミノ酸製剤
    • その他の副作用:アシドーシス(添付文書)
  • トピナ(トピラマート) …炭酸脱水素酵素阻害作用を有する
    • 重要な基本的注意:代謝性アシドーシスがあらわれることがある
    • 特定の背景を有する患者に関する注意:アシドーシスの素因を有する患者又はアシドーシスを来しやすい治療を受けている患者[高クロール性の代謝性アシドーシスが生じるおそれがある](添付文書) → アニオンギャップ正常性の代謝性アシドーシスのことです
  • エクセグラン(ゾニサミド) …炭酸脱水素酵素阻害作用を有する
    • その他の副作用:尿細管性アシドーシス(添付文書)
  • ビダーザ(アザシチジン)、ファンギゾン/アムビゾーム(アムホテリシンB)、ザノサー(ストレプトゾシン)
    • 重大な副作用:尿細管性アシドーシス(添付文書)
  • エムトリシタビン、テノホビル、エンテカビル、ジドブジン、アバカミル、ラミブジン …核酸アナログ
    • 重大な副作用:乳酸アシドーシス(添付文書) → ミトコンドリアの障害
  • ザイボックス(リネゾリド)、シベクトロ(テジゾリド) …オキサゾリジノン系抗菌薬
    • 重大な副作用:乳酸アシドーシス等の代謝性アシドーシスがあらわれるおそれがある(添付文書) → ミトコンドリアの障害
  • 塩化カルシウム
    • その他の副作用:アシドーシス(添付文書) → クロール負荷のため
  • イブリーフ
    • 副作用:代謝性アシドーシス(添付文書)
  • SGLT2阻害薬
    • 重大な副作用:ケトアシドーシス(添付文書) → グルコース排泄促進による脂肪酸代謝亢進のため
  • インヴェガ(パリペリドン)、ラツーダ(ルラシドン)、リスパダール(リスペリドン)、ルーラン(ペロスピロン)、レキサルティ(ブレクスピプラゾール)、ロナセン(ブロナンセリン) …ドパミン遮断薬
    • 重大な副作用:糖尿病性ケトアシドーシス(添付文書)
  • カデックス外用散/軟膏/ヨードコート軟膏(ヨウ素含有)
    • 特定の背景を有する患者に関する注意:重症の熱傷の患者[広範囲の使用により、アシドーシスを起こすおそれがある](添付文書)
  • メマリー(メマンチン)
    • 特定の背景を有する患者に関する注意:尿pHを上昇させる因子(尿細管性アシドーシス、重症の尿路感染等)を有する患者[尿のアルカリ化により本剤の尿中排泄率が低下し、本剤の血中濃度が上昇するおそれがある](添付文書)

参考文献:PMDA添付文書検索より引用

アルカローシス

代表的な原因

呼吸性アルカローシス

過換気 → 血中のCO2低下しPaCO2↓(炭酸が低下するのでアルカリ)

代謝性アルカローシス

症状:しびれ、けいれんなど(Ca2+とアルブミンとの結合が促進されることによりイオン化したCa2+が減少するため)

原因は、HCO3(アルカリ)の蓄積もしくはH+(酸)の喪失です

  • 嘔吐(胃酸の喪失)
  • Cl欠乏(尿中のCl低下 → 腎の集合管でCl/HCO3交換輸送体によるHCO3排泄が低下)
  • 鉱質コルチコイド(≒アルドステロン)作用の亢進(腎の集合管でH+-ATPaseによるH+の排泄が促進)
  • 低カリウム血症(細胞外K低下 → K+が細胞外シフト → H+が細胞内シフト)

注意を要する代表的な薬剤

  • サム点滴静注セット
    • 禁忌:アルカローシスのある患者(添付文書)
  • 炭酸水素ナトリウムおよびその配合剤
    • 特定の背景を有する患者に関する注意:低クロル性アルカローシス等の電解質失調のある患者(添付文書) → アルカリ負荷のため
  • ループ利尿薬
    • Clの欠乏(ヘンレ係蹄上行脚でNa+/K+/2Cl共輸送体を阻害)
  • チアジド系利尿薬
    • Clの欠乏(遠位尿細管でNa+/Cl共輸送体を阻害)
  • 鉱質コルチコイド作用を有する薬剤(甘草/グリチルリチン、ステロイドなど)
    • 腎でのH+の喪失(集合管でH+-ATPaseによるH+の排泄が促進)
    • 続発する低カリウム血症による影響

参考文献:一部は添付文書より引用

まとめ

  • アシドーシスの代表的な原因:
    • 呼吸性アシドーシス: 低換気により血中CO2蓄積
    • 代謝性アシドーシス:
      • アニオンギャップ正常性:下痢、尿細管性アシドーシス、アセタゾラミド、アルドステロン作用の低下
      • アニオンギャップが増加:ケトアシドーシス、乳酸アシドーシス、腎不全、アスピリン中毒
  • アルカローシスの代表的な原因:
    • 呼吸性アルカローシス: 過換気により血中CO2低下
    • 代謝性アルカローシス: 嘔吐、Cl欠乏(ループ/チアジド系利尿薬)、アルドステロン作用の亢進、低カリウム血症

酸塩基平衡(血液ガス分析)の計算機・勉強用(正常値と読み方)もご覧いただくと理解が深まります。

広告 Amazonアソシエイト(食品・飲料)をクリックし、24時間以内に購入していただくと、ブログの運営に直接支援が入ります。これにより、サーバーの維持や新しいコンテンツの制作に使われ、ご協力が継続の原動力です。どうぞよろしくお願いいたします。

免責事項

すべての薬剤を網羅しているわけではありません。

必ず添付文書等は再確認してください。

患者個別で対応は異なりますので、医師・薬剤師が最終的な判断を行ってください。

コメント

タイトルとURLをコピーしました